《MUMEI》

 風呂から出ると彼にバスタオルで身体を拭かれ、たまに抱きしめてくる腕に抵抗しながらようやく寝間着に着替えた。

 袖口に余裕のある寝間着という事で、タンスにしまってあった甚平を引っ張り出して着てみたはいいんだけど、なんとなく入院着のような気分だった。

「似合うな♪」

 日本の着物を珍しがって、克哉くんは終始ニコニコしながら俺の方を眺めていた。

「でもこの季節だとちょっと寒いな…」

 甚平は夏の浴衣なので肌の出る面積が多いので、ココに来てはじめて暖房を付けた。

「暖房はこれか?」
「あぁ、エアコンだよ」
「…スチームの方が効率的なのにな」
「う…うん」

 さすが倹約思考のドイツ系、キッチンを見ると食事を作るときに使った鍋などはもうすでに綺麗に洗われていた。

「克哉君、意外なもの作るんだね…」
「意外…ブルストの方が良かったか?」

 克哉くんが夕飯として作ってくれたのは、挽き肉や野菜の乗ったかなり日本食なカンジの見た目をしたうどんだった。

「子供の頃は日本に住んでたんで」

 今も十分子供じゃないか…と思いながら、使い慣れない左手でフォークを掴んでパスタのようにクルクルと巻いて食べていくと少しづつ食べていけるので案外食べやすかった。

「今日のは美味しかったよ、ごちそうさま♪」
「これから毎日作りますよ」
「あぁ…」

 利き手がこんな事になったので、それに慣れるまでは時間がかかりそうだし、それまでは克哉くんのお世話になるしかない。

「じゃあ…よろしく」
「はい」

 そう言うと、案外可愛らしい顔で克哉くんが笑って答えてくれた。

 意外と可愛く笑う子なんだな、と思いながら、初めての他人との共同生活に心中不安で一杯だった。

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