《MUMEI》

「あんたがそんな奴だとは思ってなかったわ。」

「大人になろうよ…。」

「男としてサイッテーだな。」

「…ぼ、僕も…そう思ぅ…。」

「カケル様……。」

次から次へと出て止まらない仲間からの熱い非難の声。

言い返したい気は山々なので息を大きく吸うが、何も言えないので口を開けて閉じる、それしか出来ないでいた。

「……ごめんな、サヤ。俺兄なのに、全然気付いてやれなかった。」

精を込めて深く長く頭を下げると、暫くしてゆっくりと近寄る足音があった。

顔を素早く上げると、いつもよりも格段と近くにある妹の赤く腫れた瞼が視界を埋めた。

「それは、お兄ちゃん…スバルに言ってあげてよ。カケル。」


―――――…けじめ。


それらしき物が、幼いながらも必死に考え行動してきたサヤの瞳の奥に窺えた。

「あぁ。……みんな、聞いてくれ。」

それに応える様に、俺の気持ちも先程よりも引き締まっている気がする。

皆の視線が俺へ向けられる。

「アカネとは今日会ったばっかで、ハルにはずっと世話になってる。」

もう一度皆の目を一周して、涙で震えそうな声を圧し殺し告げた。

「でも、スバルを見つけたい…!」

素直な俺の…いや、俺の妹の気持ち。

きっと年の離れた俺より双子の二人の方が繋がるものもあるのだろう。


実際のところ、俺はこいつらに甘えている。

こいつらが断るなんて事、考えもしていない。

「「「「勿論。」」」」

ほら。

少しの笑みが、俺をどんどん深くへ落としていく。

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