《MUMEI》

国の再建の一歩として婚儀のやり直しに国中が
沸いた。少しずつ活気を取り戻していた城下の
者は皆笑顔でイオルとフィオナを祝福していた。
城では婚儀の準備は終わり、主役以外は皆式場
内の椅子に座り、今か今かと待機していた。


ガ「ふむ、やはり婚儀は賑やかな方がよい。そ
う思わんかシドヴィルグ」
「そうだな」
ガ「どうした?元気がないぞ」
「貴方が夜中までずっと話をしてきたから寝不
足なんだよ!」
ガ「寝不足はいかんぞ。だから体は子供のまま
成長せんのだぞ」
「……貴方からどうしたらあのように気遣いの
ある娘が生まれたのか不思議だな」
ロ「……シド様、その方に何を言っても無駄で
すよ」
「……はぁ」
ガ「溜め息をはくと幸せが逃げてしまうぞ?」
「……」イラッ
伯「ディオマティス皇帝陛下」
「ロドリーゴ伯
爵!貴方も来ていたのですね」
伯「はい、あの時からお会いすることがありま
せんでしたから……今までの無礼申し訳ありま
せんでした」
「謝ることはない。貴方の屋敷にいたのは皇帝
ではなくただのシドですからね」
伯「……そうでしたね。……今回私は婚儀に参
列するつもりではなかったんです」
「何故だ?」
伯「私は王やイオル様のお力にはなれず、ただ
国が荒れていくのを見てる事しか出来ませんで
したから」
「彼らはそうは思っていないだろう」
伯「……え」
「一度話してみるといい。……もうすぐ式が始
まる。席に戻った方がいい」
伯「は、はい」

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