《MUMEI》

何も知らない他国の者は少年が皇帝になった
ととらえるだろうが実際は身長140cmの彼
は20歳のれっきとした大人なのだ。そんな
彼には誰にも言えない秘密があった。


「疲れた……」
?「お疲れ様にございます陛下」
「……ロイドか」


夜のパーティーが終わり自室へ戻ってきた少
年はマントを無造作に取り、控えていた青年
に投げ渡し、立派な装飾の椅子にドカッと座
った。


ロ「陛下、もう少し丁寧に扱ってください」
「そろそろ"それ"止めろ」
ロ「ですが今日貴方は皇帝となられたのです
から……ちょっ!それ王冠!振りかぶらない
で下さいぃ!!」
「なら止めろ」
ロ「はぁ……分かり、分かった。たくっ乱暴
なんだよ、お前に敬語使えるように昨夜から
練習して……」
「お腹空いたな」
ロ「おい、聞けよ。……軽いものでいいよな
?」
「手作りな」
ロ「え゛!今から!?……あ〜分かったから
、んな睨むなよ!」


悪態をつきながら青年が部屋から出ていくの
を見送った少年は今日一番の溜め息を吐いた。


「まさか私がこんなところで一国の王になる
なんて、前世では考えられなかったな〜めん
どくせぇ……」


"前世"――彼、『シドヴィルグ・リドル・デ
ィオマティス』は現代から異世界に転生して
きた元女だった。


今日一日引っ張りだこだった彼はロイドが戻
ってくるまで一眠りしようと目を閉じた。意
識が遠退くなか今までの事を思い返していた。

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