《MUMEI》

「あ、カ、イン!?」
カ「くっ……もういい!もう大丈夫だから……
落ち着け、シド」
「あ……う、」


カインの静かな声に次第に自分の中の魔力が落
ち着いていくのを感じた。炎が消えたのを確認
したカインは体から力が抜け倒れそうになるの
を慌てて支えた。カインの安心した顔にまた涙
が溢れた。


その後、駆けつけた村人達と村に戻った俺達に
残されていた者は次々と声をかけてきた。エレ
ナさんが山賊を倒したのは私だと言ったため、
皆にかなり感謝されたが私は罪悪感で一杯だった。


カインの治療が終わった後直ぐに謝りにいくと
カインは全身火傷で身体中包帯に巻かれて唯一
見えるのは右顔だけだった。改めて自分がした
事の大きさを感じた。それなのにカインはけし
て私を責めなかった。むしろ励ましてくれる姿
にとても感謝した。私は魔力をコントロールし
てカインも村も守れるようにしようとこの日か
ら毎日修行を始めた。


そして修行を初めて2年。魔力を完璧にコント
ロールし、1年後には村の守護者と称えられ、
無詠唱・杖無しの凄腕の魔法使いの名は他の村
や国にもその評判と共に広まった。


彼らは知らなかった。普通、無詠唱・杖無しで
魔法は使えないことを、それがどれだけ希少な
事も。


そしてその2年後、私の人生の転機が訪れた。

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