《MUMEI》

私は一緒に過ごすなかでロイドさんが悪い人で
はないと知ったためなんだか悪い気がして話を
聞いてみることにした。もちろん子供らしく無
邪気に。


ロイドは夕日が綺麗に見える小高い岬に座って
いた。彼の整えられていた青い短髪も頭をやや
ボサボサになっていて苦悩がうかがえた。



「ロイドさん」
ロ「……ああ、シド君か」
「ロイドさんは魔法使いを連れていかないと殺
されちゃうの?僕そんなのイヤだよ」
ロ「……君になら話してもいいかな」
「え?」
ロ「実はね帝国でその魔法使いが前王の一粒種
なんじゃないかって噂があるんだ」
「……え?(一粒種って子供って事!?)」
ロ「知ってるかい?魔法は普通無詠唱・杖無し
では魔法は使えないんだ。だが彼はそれが出来
るらしいね」
「……!」
ロ「それは前王も出来た。ずば抜けた魔力を持
っていたんだ。だが前王アダンフォードは病で
亡くなり、後を王弟ガーディスが継いだが、そ
の王政は酷いものだった。私は幼い頃から前王
の世話をしていたから変わっていく国に絶望し
たんだ。そんなとき噂を聞いて王の反対派から
一粒種ではないかと話がたって私が調べに来た
んだ。この村に入った瞬間温かく懐かしい感覚
がした。村の結界の魔力が前王のと似てたんだ。
私は彼こそ亡き王の子だと確信したんだけど…
…どうやら見つからないみたいだ」


眉を下げ水色の瞳は少し寂しげに揺れていて、
ロイドさんが王をとても慕っていたことが分か
った。

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