《MUMEI》

裏の部屋に誰もいないのを確認して机に向かい
合わせで座り、目の前の青年を見据えた。


「君は誰だ」
ジ「ジオですが…?」
「では質問を変えよう。ジオ、君は何者だ」
ジ「どういう意味ですか」
「そうだな、君は俺が何歳だと思う?」
ジ「……10歳くらいかと」
「見た目ではな。だが俺は今年で20歳だ」
ジ「え゛?……年上?」
「俺は15まで村にいたことがあるが、同年代
の友人は幼馴染み一人だけでジオなんて聞いた
ことも見たこともない……どういう意味かもう
分かるな」
ジ「……」
「この店には何のために来た?失敗ばかりなの
は店を貶めるためか?」
ジ「ち、違います!!……実は僕、ノルアード
国の第三王子だったんです」
「ノルアード……一週間ほど前に財政悪化で滅
んだ国だな。王はどうした?」
ジ「父と兄は疲労で3日前に亡くなりました。
一人になって一昨日この国に来ました。出身は
帝国に来る前に近くを通ったので代わりに使わ
せて頂いてました」
「国に入り、そしてこの店に来たのか」
ジ「国では節約のため僕が料理を作っていて、
料理の事には詳しいつもりでした。でもこの店
の料理はどれも見たことのないものばかりでそ
のどれもが美味しかったんです。感動して料理
の秘密を知りたいと弟子入りしたんですが発案
者はいないし、失敗ばかりで……」
「なるほど。店には秘密を求めてきたのに地味
な事ばかりで学べないと言うんだな」
ジ「そうです」
「君は甘い」

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