《MUMEI》

閉店したためジオと私しかいないはずの店内に
響いたのは少し疲れたような声だった。乱れた
息を整えたその人は、俺をまっすぐに睨んだ。


「あれ、ロイド」
ロ「随分と探しましたよ。イズモは貴方の命令
しか聞かないし、ゼスは暗くなる前に戻ってく
るだろうと言って探さないから私一人で探す羽
目になったんですからね」
「良かったな」
ロ「どこがですか!?……はぁ、とにかく戻り
ますよ。政務が溜まって判子待ちの列が出来て
いるですから」
「分かった分かった。だからそれ以上引っ張るな!」
ジ「…………あの」
ロ「シド様、こちらの方は?」
「新しく出来たカフェのオーナーだよ」
ロ「ああ、彼が。シド様またプロデュースなさ
ったんですね。ああ、申し遅れました。私はこ
ちらのシドヴィルグ皇帝陛下の側近をさせてい
ただいています、ロイド・ハーディスと申しま
す」
ジ「……皇帝陛下?」
ロ「……もしかして伝えていなかったのですか?」
「そういえば言ってないな」
ジ「え、えええぇぇ!?」


チリンチリーン


ジ「いらっしゃいませ。あ、へ…シド様」
「こんにちは。元気にしてたみたいだな。コー
ヒーを頼む」
ジ「いつものですね。少々お待ちください」
ク「シド様、お久しぶりですね」
「クラウディアじゃないか。君も来ていたのか」
ク「ふふ、今では行きつけの場所ですよ」
「ジオは変わっただろう?」
ク「ええ、私の店にいたころとは違って生き生
きとしていて、とても明るくなりましたね。初
めは心配しましたが、これもシド様のお陰ですね」
「俺は手助けしただけさ」
ジ「お待たせしました」
「ありがとう。ん?これは?」
ジ「実は新商品を試作してみたんです。是非シ
ド様に意見を聞きたくて」
「ほう」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫