《MUMEI》

俺は離れた場所にいるイズモに視線を送り、一
つ頷くと一瞬で店から消えた。ジオとイオルは
気付いていない。


イ「頼む、ジオ。助けてくれ!」
ジ「だから僕はもう王子じゃないんだ。無理だよ」
イ「大丈夫だよ!ジオが言ってくれれば父上も
きっと考え直してくれる筈だ」
「……まさか本気でそう思っているのか?」
イ「ああそうだ!何が助けてくれる人だ。とん
だ期待外れじゃないか」
「期待外れなのはお前のほうだ」
イ「……は?」


雰囲気の変わった俺にイオルは呆け、ジオは青
ざめた。


イ「俺が期待外れだと?」
「お前はジオや俺に何を求めている」
イ「何って助けを……」
「一般庶民にか」
イ「だ、だがジオは元王子で」
「その元王子の話を現国王が聞くと思っている
のか。お前はジオを辱しめるつもりか」
イ「辱しめる?」
「国を滅亡まで追い込み、庶民に落ちぶれた彼
は他から見れば笑い者だと気付かんのか!」
イ「……あ」
ジ「……」
「例え話を聞いたとしても何の力もない彼には
どうすることもできないだろう」
イ「じゃあどうすれば……」


本当に困ったような彼の表情に只、結婚が嫌な
だけではないように思え、どうするかと考え込んだ俺にジオは頭を下げた。


ジ「お願いしますシド様。彼を、イオルを助け
てくださいませんか!」
「!!」
イ「ジオ…何を…」
ジ「お願いします!」
「……ジオ、頭を上げろ。俺は他国には干渉し
ない」
ジ「……っ」
「……だが、民が願うなら、力になろう」
ジ「!!ありがとうございます」
「と、なれば行くぞ」
ジ、イ「え?」
「何を呆けている。イビルニードに決まってい
るだろう」
ジ、イ「ええぇ!?」

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