《MUMEI》

四十代くらいであろうロドリーゴ伯爵は茶色の
髪を後ろに流していて気品があった。落ち着い
た雰囲気の屋敷に思わず感嘆の声を上げた。
「ほぅ、良い屋敷だな」
伯「先代から守られてきた屋敷ですから趣きが
あるのですよ。私はダグラン・ロドリーゴと申
します」
「よろしく」
イ「説明してくれ。俺がいない間何があった」
伯「王子がいなくなった事をいいことに兄君エ
ドガー王子が父王イェスカルド陛下の代わりに
と戦略結婚を進めています。先日、婚約相手の
ガラノス国のフィオナ姫が城に滞在しておりま
す」
イ「何だって!?」
ジ「姫を城に……これでは簡単には断れません
よ。失敗すれば最悪戦になる」
「エドガー王子も卑怯な事をする」
伯「イオル王子、このままでは……」
「一つ聞きたいのだが、何故そこまで婚約を嫌
がる。王太子ではないのならこうなることも覚
悟していたのではないのか?」伯「確かにイオル王子は2番目の王子。王太子
ではありませんが……」
イ「……兄は自分より優秀な俺を推すものが現
れてから、自分が王だと知らしめるため王の政
務を全てをこなすようになった。それは酷い悪
政だったんだ。国は乱れ、船を出すにも金を取
り今では漁に行くものもおらず、民からは多額
の徴収を命じたんだ」
伯「逆らえばどうなるか……皆、毎日怯えてい
るのです」
ジ「なるほど、今回の婚約はイビルを国から離
すため、ということですね」
伯「これまではイオル王子が守っていましたが
居なくなれば国はもう……」
イ「兄に国を奪われたら父上や民はきっと辛い
目にあってしまう」
伯「王子……」
イ「だがこうなってはもう従うしか……」
「なるほど……そう言うことなら私も力になる
のは正しいな」
イ、伯「?」

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