《MUMEI》

 「……これから、どうする?」
花弁をすべて集め、弔ってやった後、坂下が徐に透子へと問う事をしていた
相も変わらず目的もなく往来を進みながら、だが透子からの返答はない
唯々今は歩きたいのだろうと坂下は察し
付き合ってやろうとその後ろを付いて歩く
「……私を、アナタの最初の贄に、してくれる?」
「は?」
不意に脚を止め、何を言い出すのかと思えば
透子は眼を逸らすことなく坂下を見やったままだ
「……私は、13だから」
自分だけが生き続ける訳にはいかない
そう訴えてくる透子へ
坂下は、だが何を言う事もなく、透子の手を取った
「……見返り、今言ってもいいか?」
「え?」
暫く無言の後、坂下が話を切り出す
以前、透子が坂下へといった見返りの話を持ち出した
別に構わないけれど、との透子へ
坂下は僅かに表情を和らげ、その身体を抱き締めてやる
「ちょっと……」
突然のソレに驚いた様子の透子が坂下の腕を解こうと身を捩れば
坂下の唇が透子の耳元へと寄り、暫くこのままで、と身を凭れさせる
そして徐に、自分と一緒に居てくれる気はあるかを問うていた
「……私を贄にしなくてもいいの?」
「俺はそんなモン要らん」
「なら、アナタはこれからどう生きるつもり?」
不安げな表情を浮かべながら坂下を見上げてくる透子
坂下はさぁなを返しながら、なる様にしかならないだろうと苦笑を浮かべて見せた
この先の事など分かる筈も無ければ、解りたくもない、と
「取り敢えず、色々見て回るか」
自分が負うべき世界は今、どうなっているのか
何もせず、唯無意味に時間を食うよりかは建設的だろうと、坂下は前を見据える
「……そう、ね。それも、いいかもしれない」
同意してやりながら、透子は坂下の唇へ己がソレを重ねた
そしてゆるり離れた後
「付いて行くから」
と、有無を言わせない口調
言ってやりながら坂下の手を取ると、離れてなどやるものかと言わんばかりに握り締めてくる
その手の温もりに何故か坂下は安堵し
漸くその顔に穏やかな笑みを浮かべ、坂下は透子を連れ立ってまた歩き始めたのだった……

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