《MUMEI》 ロ「……なるほど、これは穏やかではないですね」 扉の前で密かに立ち聞きしていたロイドは眉を 寄せた。城にいるはずの陛下が消え、一緒にイ ズモも消えていたため、一先ずイズモが一緒な ら危険はないだろうと油断していた。いつもの ごとくカフェにいるだろうと迎えに行くと店は 閉まっていた。慌てて周りの人に聞くと今日は ずっと閉まっていると言われ、焦った。国中を 回り陛下を探したが全く見付からず、手掛かり はないかと、途中で放り出したままの机を探る と、一枚の書状が目についた。婚儀の招待状の ようで日にちも近かったためもしかしたらイビ ルニード国に行ったのではないかと淡い期待を 抱き、急いで逃げるゼスとその部下数人を引っ 張り込みイビルニード国へ馬車を飛ばした。 初めに目についたのは貿易国だというのに静ま り返った現状だった。人の気配はするが人通り は全くなく馬の蹄と馬車の揺れる音しかしない くらい静かだった。 ゼ「……何だか前の帝国を見てる見てぇだな」 ロ「……そうだな」 無意識に馬の足を早め、着いた城ではディオマ ティス帝国の赤に金の六枚の羽の描かれた馬車 に驚いていた。その様子からシド様は城にはい ないのだと悟り、連れてきた者達から一番小柄 な者をローブを被せ陛下の代わりをさせた。ゼ スとともに先に部屋へ案内させ、私は謁見場へ 案内され向かったのだ。 前へ |次へ |
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