《MUMEI》

「まあ、どんどん飲んで…」

俺は裕斗のグラスに注いでやる。

――この世界が初めてなこの子が何となくほっとけねーで、
構い始めた。

最初から素直になついてくれたし、
年の離れた弟が出来た感じ。
それになかなか可愛いところが多くて一緒にいて、楽しい…。






「伊藤さん…俺ねー…、好きな人出来た事ないんだ……、これっておかひいのかなぁ…」





裕斗はだいぶ出来上がってきたのか、真っ赤な顔で鯣をかじりながら、たどたどしく話だした。




…てか、俺もどんだけ飲んだか分からねえ状態。

「ほー!初耳ですなあ、じゃーまだ童貞なんだな?」




面白がって言ってやる。

すると、まさかそんなこたねーだろうと冗談半分で言っただけだったのに…


「…やっぱりおかしいですか? 」





裕斗はやたら恥ずかしそうにボソボソと話しながら、
俺から露骨に視線を反らした。


どうやら図星だったらしい…。






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