《MUMEI》
「まあ、どんどん飲んで…」
俺は裕斗のグラスに注いでやる。
――この世界が初めてなこの子が何となくほっとけねーで、
構い始めた。
最初から素直になついてくれたし、
年の離れた弟が出来た感じ。
それになかなか可愛いところが多くて一緒にいて、楽しい…。
▽
「伊藤さん…俺ねー…、好きな人出来た事ないんだ……、これっておかひいのかなぁ…」
裕斗はだいぶ出来上がってきたのか、真っ赤な顔で鯣をかじりながら、たどたどしく話だした。
…てか、俺もどんだけ飲んだか分からねえ状態。
「ほー!初耳ですなあ、じゃーまだ童貞なんだな?」
面白がって言ってやる。
すると、まさかそんなこたねーだろうと冗談半分で言っただけだったのに…
「…やっぱりおかしいですか? 」
裕斗はやたら恥ずかしそうにボソボソと話しながら、
俺から露骨に視線を反らした。
どうやら図星だったらしい…。
・
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫