《MUMEI》

「………………ふむ。」

「………………まあ。」

「………相変わらず。」

「「「旨くも不味くもない。」」」

「言うな!」

少し馴染みの出てきたリビングで、八時の朝食を向かい合って口に運ぶ。

昨日の夕飯は女性に作らせてしまったので、今日の朝は俺が担当することにし、オムレツとパンとスープを作った。
元から料理はする方だから手際は良いのだが、味が普通、なのだ。

「ショウ兄の料理は世界を越えても変わらないんだね!」

サヤが俺の隣で笑いながら躊躇もオブラートに包むこともせずに俺を貶してくる。

「うるせえ!不味くないからいいだろ!」

あまりに微妙過ぎる空気に、叫ばずにはいられない。

アカネとハルはただ俺作の料理を見つめ、一口一口を重苦しく噛み締めて味わっている。

「……うん。取り敢えず、話すべき事を話そうか。」

「これからどうするか、だったわよね。」

そんな二人の息ぴったりの逃げ。

自分でも解っていたが、まさかここまで気まずい感じの空気になるとは。妖精達は素知らぬ風に宙を舞ってお喋りをしている。

「ショウ兄のお勧めの場所とか、ない?レベル五十がそこそこコツコツ闘える所。」

朝食の事など何もなかったかの様に、サヤが空気を切り裂いた。

多少の動揺はオムレツと共に喉の奥へと流し込む。

「そうだな…ぺテコ山とか良いかもな。でも、その前にお前はオリガルトに行かないと。」

「オリガルト?どうして五十で始まりの土地へ行くのよ。」

アカネが疑問そうに箸を止めて此方を見る。

そしてその理由を話そうと口を開いた途端。

「レベル五十だからよ。」

ハルが俺の言おうとしたことをまんま口にした。

「まだこのゲームに馴染んでもいない状態でレベル五十なのよ。これでレベル相応の戦闘をしろって言っても、一方的にやられてゲームオーバー。つまり、死ぬ。」

「その通りだ。昨日のサヤを見ただろ?屋根から屋根への飛び移りも出来ないんだ。何故なら始めて間もないから。」

そう。

今のサヤはレベル五十という経験値を持った初心者なのだ。

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