《MUMEI》

 「……?」
途切れてしまった意識を取り戻したのは夜も更けきった深夜だった
全身に感じる気怠さ
ソレを何とかこらえながら身を起こせば
その傍ら、ロイドが寝ている事に気付く
その寝顔をまじまじと眺め見れば昨日の情事を思い出し
小野坂は居た堪れなくなり、布団をかぶってしまう
「良、眠れませんか?」
何とか寝ようと眼を閉じた矢先
ロイドが身を起してきたのが気配で知れた
柔らかく布団を捲られ、ロイドの顔が正面に間近
近すぎるソレに、小野坂は小野坂は更に顔を朱くしてしまう
「……顔が赤い。熱は?」
「な、ない!熱なんてもう下がったから!」
額に触れられただけで意識してしまい
その小野坂の動揺ぶりにロイドは微かに肩を揺らす
「わ、笑うな!」
「すいません。つい」
他愛のない会話
互いの間にあるのはふわりとし柔らかな空気
ロイドは未だ微かに笑いながら、小野坂の髪をゆるり指先で梳き始める
「……何?」
何度も何度も梳かれ、小野坂はくすぐったさに身を捩る
だが、嫌ではない
唯、このふわふわとした空気が、小野坂は何となく気恥ずかしかったのだ
「……風呂、入りたい」
身体が何となく濡れていて気持ちが悪く
情事のあとで腰が全く立たなくなってしまっている小野坂はロイドへと手を広げて見せる
抱き上げろ
その意図が伝わったのか
ロイドはまた肩を揺らすと、はいと短く返事をし小野坂を抱き上げた
そのまま浴室へと入り、浴槽内へと小野坂の身体を降ろしてやる
「上がる時、声を掛けて下さい」
外で待っているから、とロイドは戸を閉じた
ソレを見送ると、小野坂はシャワーで全身を洗い始める
未だに早い、鼓動
宥める様に胸元を抑えてみれば、それを直に手の平で感じ
また、昨夜の事を思い出してしまう
「……怖く、無かった」
感じてしまいすぎる事への恐怖は確かにあった
だが、触れてくるロイドの手は、本当に優しかった
「あいつ、なんであんな事出来るんだよ」
また色々思い出してしまい、小野坂は眼の下まで湯に浸る
暫く浸かったままぼんやりとしていると
「良!大丈夫ですか!?」
音が聞こえない事に心配したらしいロイドが弾く勢いで戸を開いた
ソレに驚き、脚を滑らせてしまった小野坂はそのまま湯の中へと沈んでしまう
「お前……、行き成り開けるなよ」
驚くだろう、と湯から顔を出しながら言ってやれば
ロイドは無事の小野坂の姿を見、安堵の表情を浮かべて見せた
「すいません。あまりに静かなので心配になってしまって……」
「子供じゃねぇんだから溺れないって」
余りの心配性に、小野坂は笑う声を漏らし
上がるからとロイドへと手を伸ばしてやる
ロイドは求められるがままに小野坂を抱き上げると、バスタオルに包んでやりベッドへ
それからは甘やかし放題で
小野坂にパジャマを着せてやると髪を乾かし始めた
「良の髪は猫っ毛ですね」
「そか?」
「はい。ふわふわしていて、触れていて気持ちがいい」
ドライヤーの熱を当てながら、乾いていく熱に触れていく
この手は、本当に優しい
この手になら、自分は素直に縋る事が出来ると
全身から力を抜き、小野坂はロイドへと身を凭れさせた
暫くそのままで居ると、またゆるりとした眠気が小野坂を襲う
「まだ早いですからね。寝ても、いいんですよ」
ロイドの穏やかな低音が耳元で響く
その声に誘われるかのように小野坂は頷くと
ロイドへと身を凭れさせたまま寝に入ったのだった……

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