《MUMEI》
婚約?
同刻

シタリア大陸
ジーブル帝国
帝国は大陸随一の大国である。

「婚約…ですか?」

ジーブル帝国の中央に建つ宮殿内、謁見の間。

そこには帝国のトップ国王とその妃、そして二人の息子である、第一王子がいた。

先程の発言は王子のものだ。
ジーブル帝国第一王子カーリル・エンシー・ジーブル
燃えるような緋色の髪を持ち、吊り気味の切れ長の目が印象的な長身の青年だ。

王「そうだ、お前は婚約した。相手はシーバス王国のラティ王女だ」

カーリル「もう決定事項なのか。いつの間に」

王「王女は婚約披露のため、5日後我が国へ来る。お前にはその迎えの準備と滞在中の世話をしてもらう。話はそれだけだ」

国王はカーリルの言葉など聞いておらず、言うだけ言うと話は終わったとばかりにき妃を連れ自室に戻ろうとした。

この国王、話すだけ話して人の意見は聞かない、少々自分勝手なところがある。
といっても政治面では忠告や助言などちゃんと聞くので独裁国家にはならず、国内は平和だ。
カーリルにとっては今、国云々はどうでもいいことだが。

カーリル「待ってください、父上。私は同意などしておりません。」

カーリルは自室に戻ろうとしていた父王に声をかけた。
その声に立ち止まり、振り返った。

王「これはもう決まっておる。お前も知っておろう、さっきも言ったが相手はシーバスのラティ王女、月光神の神子だ。その意味分かるな?」

カーリル「婚約した理由は私とその姫が神子だから。そんな理由からですか。」

そう、ジーブル帝国第一王子カーリル・エンシー・ジーブル殿下は太陽神の「神子」であった。

王「そんな、とはなんだ!太陽神と月光神は対の神。そしてお前と姫は神子同士、二つの神と同じように対となるのだ。どうだ、すばらしいだろう。」

と、熱く語った。
国王は運命とかを本気で信じ、自分と妃である妻を二つの神に例えるロマンチストだった。

自分のロマンを実現するために多少強引にでも事を進める。
なまじ一国の王、しかも強大な帝国で他国にも影響力があるから非常に厄介であった。

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