《MUMEI》

「で、またオリガルトか。」

「仕方ないでしょ。文句言わない。」

ハルが汽車の人混みを気にする音量で俺に話しかける。

人がまだまだ多いので、アカネとサヤは隣の車両に乗車することになった。

「ヘイヘイ。」

前回と変わらず、中心を安定の領域で確保しているので、落下等の危険はない。

…まぁ、扉が無いので完全とは言えないが。

「…これから、どうなるのかな。私達。」

ハルが、外を見ながら不安げに問い掛ける。

人混みを縫って見据える瞳は、何処か寂しげに見えなくもない。

「……さぁな。誰にも判らないさ。創った本人でさえ、きっと。」

こんな大掛かりな、テロと言っても過言では無い犯罪は、俺の記憶上かつてないと思う。

まぁ、俺の記憶が何処まで正しいか、というのは怪しい所があるが。

「…何があっても、ハルは俺が護るよ。」

俺が原因で此処にいる人物は、俺が何に変えても護る。その為にも、サヤには戦力になってもらわなければならない。

「私も、カケルを護るよ。何があっても。」

ハルがそう言うのは、ハルが此処に残った理由だから当然なのかもしれない。

が。

やはり、ハルからそう言われるとなんとも嬉々とした気分になって何も言えないからたちが悪い。


「………どーも。」


自分で解るくらいの赤面は、気付いて欲しいような、欲しくないような。

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