《MUMEI》
もう一つ増えた
「あ、おじさん七生居ますか?」
七生父が家で飲んでた。



「……逃げた、腹減ったら帰ってくるだろ。金持ってないから。」
まだ逃走中……!


「……探しに行ってくる。」えーと。
七生の行きそうな場所……携帯かけるかな。



「…………高いとこ?」
上るの好きだからな。
橋とか……。

じゃあ、あそこか。
大体行くとこなんて限られているんだ、七生は捜してもらいたがっている。

いた。あのマフラーは七生だ。


黙って横に並ぶ。腹減らないのかな。

「……飴いる?」

ポケットに入っていたのを出す。受け取って食べた。




「ごめん。」

七生が手摺りの上に腕を乗せ、顔を埋めた。


「七生、お前は悪くないよ。俺が弱いからいけないんだ。
幸せだよ、幸せなんだけど、将来のこと考えてたらさ怖くなって。
いつも一緒だったのに離れ離れになるんだよ?
七生は着実に成長して、俺は取り残されてるみたいでさ。言ってくれてもいいじゃないか……その、大学行くってのもさ。」



「じろー……、怖い思いしてたの?」
七生の顔がこっちを向いた。

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