《MUMEI》

来客を知らせるチャイムが鳴った
こんな時間に一体誰か
鳥谷は怪訝な表情を浮かべながらも戸を開く
「よぉ、鳥。近くまで来たから来てみた」
そのはた迷惑な来客は友人複数
手には酒の入ったコンビニ袋が握られていて
勝手に鳥谷宅を酒盛り場にと決めてきたようだった
「……帰れ」
随分と勝手なソレに鳥谷は速攻で答えて返す
考える間もなかったソレに、友人らはワザとらしく泣く様な素振りを見せながら
「お前、それちょっと酷くない?確かに押しかけて来てるのはこっちだけど……」
話す途中、不意にその声が止まった
友人らが騒ぐソコは玄関
そこには小鴨の靴がきれいにそろえて置いてあって
友人らの視線に気づいた鳥谷は僅かに表情を強張らせる
「……鳥。これはどう見ても女モノ、だよな?一体誰連れ込んでる?」
「……誰でもいいだろ」
「怪しい。もしかして彼女か!?だったら紹介しろって」
勝手に決めつけ、話を盛り上げていく友人ら
だが鳥谷と小鴨の関係はまるで色恋とは縁遠い
この感情が一体何なのか、京葉する言葉が見つからなかった
「……とにかく帰れ。ここで騒ぐな」
近所迷惑だろう、と強制的に追い出そうとした丁度その時
悪いタイミングで小鴨が風呂から上がってきてしまった
騒ぐ鳥谷らに気付き、何事かと顔をのぞかせてくる
「鳥谷クン。お客様ですか?」
サイズが矢張り合わず、ダブつくスウェットを引きずりながら出てくる小鴨
ソコに居たのが小鴨も知る鳥谷の友人らである事に気付き
慌てて顔を引っ込めた
「……今のって、もしかして小鴨ちゃん?」
「……」
「なぁ、鳥。今のって小鴨ちゃんだろ!?もしかしてお前、無理矢理家に連れ込んだのか!?」
「……んな訳ねぇだろ。人を犯罪者みたく言うな」
溜息交じりに返すと、鳥谷はさっさと友人らを追い出しに掛る
「鳥、お前!俺たちを追い出して小鴨ちゃんと何しようってんだよ!?」
「何もしねぇよ。馬鹿か、お前ら」
最早その実を語る事すら面倒くさい
どうせないを言った処で騒がれるのには違いない
ならば多くを語らぬ方が得策だと、鳥谷はそれ以上は何を語る事もやめていた
「……で?お前ら、一体いつまで人んちに居る気だ?」
中々帰ろうとはしない友人たち
その事に等々焦れた鳥谷がつい問うてしまえば
友人らはどうしたのか苦笑を浮かべながら
「な、鳥。俺たちも、泊めてくんない?」
などと言い出す
「……さっさと帰れ」
ソレを一蹴し、鳥谷は友人らを強制的に外へ
出してやり、即ドアを施錠
未だ外で騒いでいる友人らは無視する事にきめた
「小鴨、もう出てきていいぞ」
すっかり身を潜めてしまっている小鴨へと言ってやれば
その姿がゆるり現れる
恥ずかしげに顔を僅かに赤らめているその様に鳥谷は肩を揺らしながら
だがソレに触れてやることは敢えてせず
作った食事を卓へと並べ小鴨を手招いてやった
「リクエストの、キーマカレー」
腰を降ろしたのを確認すると、ソレを小鴨の前へ
置いてやり、召し上がれとスプーンを渡してやれば
小鴨は嬉しそうに顔を綻ばせ、いただきますと手を合わせ食べ始めた
「そう言や小鴨」
「ん?」
「今日の飯って、お前が作ってくれるんじゃなかったっけ?」
買い物に付き合った報酬
互いにうっかり忘れていて、顔を見合わせれば小鴨は照れた様に笑みを浮かべながら
「……明日の朝ごはんは、私が作りますね」
今日の食事と止めてくれたお礼に、と意気込む小鴨へ
鳥谷は表情を緩ませると、頭に手を置き撫でてやっていた
互いの間に流れる穏やかな空気
このふわふわしたそれは、一体なんと形容したものか
自分のソレを解りかねながら、だが今は解らないままでいいのでは、と
鳥谷は何気なく小鴨の方を見やる
「鳥谷君?」
どうかしたのか、と首を傾げてくる小鴨
何でもないを返すと、鳥谷は腰を降ろし食事を食べ始めた
自分が食べるよりはるかに速い速度に
コガモは驚きながら、だがその様に何故か笑みを浮かべまた食べる事を始めていたのだった……

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