《MUMEI》

チーーン。

手を合わせて目を閉じる。

お父さん、元気にやっとる?私は元気よ。

実は私、今日死ぬんだ。

だから、もうすぐお父さんに会えるわ。

意外と楽しみなんよ。

別に辛くなんかないから、待っとってな。


「…お父さん、なんか言いよった?」

気づくとお母さんがこっちを向いていた。

「さぁ……死人は喋らんと。」

私が笑い半分でうい言うと、お母さんがお父さんを見ながら、「そうよね。」と寂しそうに呟いた。

ふと思った。

私が今日死んだら、お母さんが一人になる。

これから先、家族がいなくなっちゃう。


死にたくない、なんて思った。

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