《MUMEI》
第1章〜魂の白刃〜 第1幕 ジャングルが庭
無事?に安全と思われるところに出ることができた。
「あ、ここどこだ?奴が次元渡りしない理由、わかったよ。」
そう。俺と葵(寝ている)はジャングルの中にいるのだ。ご存じだろうか。俺は最高にパニックになっている。想像してみろ。地図なし、方位磁石なし、食料なし、水なしの4拍子ときた。だが、ここは異世界。俺の知る世界とは違う。当然、俺が地図を持ってることもなく、俺がもともといた世界の方位磁石が役に立つのか分からず、次元渡りでは食料と水を持ち運ぶことができない。必然的に無し、無し、無し、無しの4拍子が揃うのだ。
「うっ。また勢いでやっちまった。」
少し後悔しても意味は、ない。あいつのことだ。戻ったら殺されるのがまだましだと思われる拷問が待ち受けているのだ。だが、俺はやらなければならない。ここと他の異世界を渡り、仲間を集め、奴をぶちのめす。俺は、覚悟を改めて下を向いていた頭を正面に向け、次は周囲を見渡す。樹、樹、樹、樹、樹、樹。少ししたを見渡すと樹、樹、樹、キノコ(毒がありそう)、ゴキブリのようなデカイ昆虫。足元の周囲は、落ち葉、木の枝。見事に迷子だ。ちなみに葵のやつはいまだに寝ている。わが幼なじみながら大したものだ。いや、これは誉めてなどいない。馬鹿にしているのだよ、うん。って、一人でウンウン頷いている場合か?俺は!!
ズバシュッ!!バサバサ、ドサーッ!!
突然、俺と葵(まだ寝てる)から一番近い木(結構太い)が倒れた。いや、切り倒された。根本からスッパリと…。何者かの手によって。すると、複数の木や木の枝の影に隠れる人物の足音からして、女性だ。俺がくぐり抜けてきた修羅場なめんな。
「娘を離しやがれです!この変態!」
ん?鋭い刃物のような、いや、絶対零度の冷気を纏った冷ややかな声俺に対しての罵倒だと承知の上で誰か探すフリをしてみた。こう、頭を左右に振ってね。
「いや、お前しかいねーです!この犯罪者!!」
「ええっ!!俺?誤解っすよ!」
どうやらこの声の主は、俺のことを女の子をおんぶして運び殺人でもするのかと誤解したらしい。
「うるさいでやがります!これでもくらいやがれです!!」
再度、襲いかかる謎の斬激。
ズバババババッ!!!!!!!ドドドドド!!!!!!!!!!!!!
彼女からの距離は大分離れているみたいだ。俺の腕の一本が切り飛ばされた。まったく…けんかっぱやいこって。切り飛ばされた左腕の残った部分は徐々に骨と肉、血管の一本一本が“再生”した。この能力のことは次の戦闘にでも説明しよう。声の主は見当たらない。ならば、
「なあ、ここは何処だ?」話が通じるのであればやらねばならない。無駄な争いはしないに限る。無駄をなくすってエコに繋がるからな。森のために立ち上がる俺。
「マジですか?ここを知らないなんて終わってやがりますね。」
…うっ。うるさいやい。迷子なんだ。恥ずかしくもなるよ!うん。幼い子供の迷子ならわかるが高校生ぐらいの見た目の俺が迷子とは恥ずかしい。穴があったら入りたい気分だ。でも、実際にその穴に入って出られなくなったらさらに恥ずかしいよ。うん。
「おい!貴様、何ボーッとしてんですか!!」
足音が聞こえ、俺との距離が近づいた。甘いな。丸聞こえだ。
「なんだ?」
「聞いてねーでやがりましたね。此処はお嬢様のお庭だっていってんですよ。」
…なんだって〜!!!!このジャングルがか?自然に優しいエコなお嬢様ぶってんじゃねー!!って何考えてんだ俺は…、
「……すげえな。」
金持ちの思考ってわかんねーよ。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫