《MUMEI》

 翌朝、鳥谷宅に朝食を作る、耳に心地のいい音が響き始めていた
その音と香りにつられ眼を覚ました鳥谷は台所で忙しく動く小鴨に気付く
昨日のお礼に、と張り切っている様子の小鴨
ソコまで気張らずともいいのに、と鳥谷は僅かに肩を揺らす
一体なにを作ってくれているのか
足音も静かに様子を窺いに台所へ
「小鴨」
後ろから覗き込んでやれば
小鴨は首だけを振り向かせ、おはようございますを返してくる
「朝ごはん、もう少しでできますから」
「朝飯、何?」
「スクランブルエッグと、野菜サラダです」
パンもありますと見せてくれるそれは何とも美味そうで
食べてもいいのかを問いながら鳥谷は食卓へと着いていた
「どうぞ。召し上がれです」
パンもありますと見せ来るそれは何ともおいしそうに焼けていて
ソレを受け取ると、鳥谷も昨夜の小鴨の様に量の手を合わせ、戴きますをし
食べ始める
「……メシ、食ったら不動産屋行くか」
「?」
本来の目的をうっかりにも忘れているのか、どうしたのかと言った様な顔
暫く顔を見合わせていたが本気で忘れているようで
鳥谷は困った風に微かに笑いながら
「ま、お前がずっとこのままでいいって言うなら、俺は別にいいけど?」
揶揄う様に言ってやる
すぐ様思い出したのか、顔を真っ赤に俯いてしまう小鴨
面白い、だから揶揄う事を止められない
「冗談だって。ほら、食ったら行くぞ」
成るべく急かさぬ用言ってやり
暫く後、コガモが朝食を食べ終わると二人連れだって不動産屋へ
諸々の事情を説明し、鍵wp開けてもらう
ようやっと自宅へと入れた小鴨はホッと安堵の表情だ
「鳥谷君。ありがとうございます」
深々頭を下げ、改まって礼を言ってくる小鴨
鳥谷はゆるゆると首を横へと振ってやりながら、気にするなをかえしてやる
「けど、次から気を付けろよ。二度、三度やったら相当な間抜けだからな」
だが一応は釘を刺してやれば、小鴨は言葉を詰まらせ
徐に鳥谷を見上げる事をすると
「頑張ります。でも、もしまた同じような事になっちゃったら、鳥谷君、泊めてくれますか?」
訴える様な上目使い
小動物にも見え、鳥谷は否とは最初から言う自摸入りはなかったが更に言えなくなっていた
もしそうなってしまった場合は言って来い、と頭に手を置いてやれば
小鴨の表情がふにゃりと笑顔に変わる
ああ、この顔は卑怯だ
「……本っ当、俺はお前には甘いよな」
つい愚痴る様に逝ってしまえば
何尾事かわからない様子の小鴨は首を傾げる
鳥谷は何を言ってやる事もせず、唯笑みを浮かべて見せるだけだ
「鳥谷君、教えて下さい」
「いーや」
「ど、どうしてですか!?」
「ナイショ」
「と、鳥谷君!!」
「ほら、コガモ。学校、遅刻する」
携帯で時間を買うにんすれば8:50
鳥谷は小鴨を宥めてやる様に頭をやんわりと叩いてやり
まずは自身の身支度のため自宅へ
手早く支度を済ませ、荷を持つと改めて小鴨を迎えに
「コガモ―。支度出来たか?」
様子をうかがいに中を覗き込んでやれば
丁度、寝ぐせづいた髪を何とかまとめようとぁ苦労している最中だった
暫くはその様子を見守っていた鳥谷
だがこれ以上待てない時間に差し掛かると部屋へと上がり込み
小鴨の背後へと立って居た
「鳥谷君?」
首を逸らし、態々見上げてくる小鴨へ
鳥谷は前を向いている様言ってやると、手近にあった櫛で小鴨の髪を梳き始める
「……お前の髪、相変わらず猫っ毛な」
細く、ふわりとした髪
触れていて気落ちの良いソレを結ってやれば
その出来に小鴨の表情が嬉しそうなソレへと変わった
「鳥谷君は器用なんですね」
凄いです、と向けてくる満面の笑み
これ位ならば普通に誰でも出来そうなのだと思いもした鳥谷だったが
感心してくれている様なので敢えて何も言わずにおく
「じゃ、行くか」
後ろに乗れ、と荷台を指せば、小鴨が遠慮気味に乗ってくる
ソレを確認し鳥谷は自転車を走らせ始めた
大学までは自転車で10分ほど
その間、互いに何を話したわけでもない
それでもどうしてか心地いいと感じる瞬間だった
「アレ、お前の友達じゃないか?」
途中、遠くにその姿を見つけ鳥谷は指を指す

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