《MUMEI》

赤崎君。

それ以上親しみのこもった呼び名は抵抗があって、ずっとそう呼んでたっけ。

でも、ちゃんと下の名前も覚えてるものだな。

あまり自分の記憶力に自信はなかったので、驚いた。

「蒼生君。」

なんとなく、中学校の外を沿って歩きながら、呟く。

今ならきっと本人の前でだとしても、名前が呼べるかもしれないな、なんて考えた。

でも、すぐに無理だって思った。

だって、今日、いきなり、メアドしか知らない、しかも過去の好きな人と会える訳がない。

返信が来ないで私が死ぬか、用事があるかどっちか。

あぁ、お腹空いたな。

そんなことを思っていた時だった。

ピロリロリロリン♪

携帯がメールを受信した音がする。

画面には、奈津子、という文字。

「………まじ?」

奈津子っていうのは、私の高校の時に一番仲が良かった友達。

今でも飲みに行ったりする奈津子からの、突然の連絡に、私は愕然とした。

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