《MUMEI》 本当の恋〜歩視点〜 沈黙が流れる……。 さっきまで大人に見えていた海が、同い年に見えた瞬間だった。 暫く廊下で突っ立っていると、海の携帯が鳴った。 海は携帯を開き画面を見る。 携帯を操作し、微笑むと俺の腕を再び引っ張っていく。 「麗羅ちゃんと栄実、屋上に行くってさ!」 どうやら蝶野からメールが届いたようだ。 俺たちは、急ぎ足で屋上に向かう。 もう授業が始まっているようで、廊下はとても静かだった。 屋上に着きドアを開けると、座りこんで涙を流している麗羅ちゃんが目に飛び込む。 俺は目を見開き、走って駆け寄る。 「麗羅ちゃん!?」 麗羅ちゃんは、プイッと顔を背けた。 長いまつげに溜まる涙が、すごく愛おしく思えた。 平気そうな顔をして教室を出て行ったけど、こんなに辛かったんだ…… 我慢してたんだろうな。 そう思うと胸が締め付けられた……。 どうして傷ついてるのが分からなかったんだろう? 情けない。 もっと麗羅ちゃんのこと分かってあげたい。 麗羅ちゃんを傷つける全てのものから、守ってあげたい。 俺の思い描いてた甘酸っぱい青春が、酸っぱいだけの青春になってもいいから、俺は麗羅ちゃんに青春を捧げたいと思った。 たとえ麗羅ちゃんが口を聞いてくれるようにならなくったって、冷たくあしらったって一緒に居たい。 俺が好きでいれば、くっついていれば、ずっと隣に居られるんだ。 麗羅ちゃんの悲しみを分かるようになりたい。 一緒に背負えるようになりたい。 俺は、この時本気で麗羅ちゃんに恋してしまったんだと思う。 前へ |次へ |
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