《MUMEI》

「……こっちが俺の部屋。つっても布団と机くらいしかないけど」








「わぁ………ほんとだ…」









ゆっくりゆっくりのぞきこむと、本当に言った通りの部屋だった










なんだか生活感のない、色のない部屋










布団の青と黒


畳の緑


机の茶色









それ以外の色は、一之瀬君の見にまとった服だけ








タンスも見当たらない








「洋服は隣の部屋にしまってる……ケホ…」









「あ、寝てて!おかゆつくるから」











そうだ




感動してる場合じゃなかったんだ









一之瀬君が風邪ひいてるんだから、私がなんとかしなきゃ









がんばらなきゃ











「……ありがと」








弱ってる一之瀬君は素直で可愛い









こっちまで素直になりそうだ











「なんてことないよ」









だから、私をもっと必要としていいのに






なんて










幸せなことを思った

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