《MUMEI》

「赤崎君?」

こっそりと、背後から音もなく近寄る。

「ん、あ!」

赤崎君はすぐに振り向いて、私を指差して絵に描いた様な反応を見せた。

「覚えてたんだ。」

「そんなすぐ忘れねぇよ。」

「そっか。私も覚えてたしね。」

あれ、なんだろう。

結構アレだな。ドキドキするな。

「…赤崎君って、今何やってる?」

周りの声が遠くなってく。

「専門学校行ってるよ。美容師になりたいからさ。」

「ああ。言ってたね、そんなこと。」

「覚えてたんだ。」

「うん。」

当たり前じゃん、って普通に言いたかったけど、どうやって言っても特別な感じがして、口を閉じた。

「そこー!居酒屋行くって!」

奈津子が私たちに声をかけてくれる。

「すぐ行く!」


なんて言って、ちょっと歩くのを遅めたのは、たぶん誰も知らないだろう。

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