《MUMEI》 「赤崎君?」 こっそりと、背後から音もなく近寄る。 「ん、あ!」 赤崎君はすぐに振り向いて、私を指差して絵に描いた様な反応を見せた。 「覚えてたんだ。」 「そんなすぐ忘れねぇよ。」 「そっか。私も覚えてたしね。」 あれ、なんだろう。 結構アレだな。ドキドキするな。 「…赤崎君って、今何やってる?」 周りの声が遠くなってく。 「専門学校行ってるよ。美容師になりたいからさ。」 「ああ。言ってたね、そんなこと。」 「覚えてたんだ。」 「うん。」 当たり前じゃん、って普通に言いたかったけど、どうやって言っても特別な感じがして、口を閉じた。 「そこー!居酒屋行くって!」 奈津子が私たちに声をかけてくれる。 「すぐ行く!」 なんて言って、ちょっと歩くのを遅めたのは、たぶん誰も知らないだろう。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |