《MUMEI》

行って来いと背を軽く押してやれば小鴨は頷き
小走りに友人らの元へ
途中、態々振り返ると鳥谷へと大手を振ってきた
「前向け。転ぶぞ」
手を振り返してやりながらそう言ってやればまた頷いて走っていった
その背を見送り、やれやれと肩を撫で下ろせば鳥谷も教室へ
「鳥〜。お前、今日提出の課題やったか〜?」
入るなり、友人からのそんな声
一応はやってある事を返してやれば、見せて欲しとせがまれる
「頼むよ、鳥!今日なんかおごるから!」
よほど切実なのか、良の手を御合わせ拝む様にして頼まれてしまえば
否とは流石に、言いにくい
「じゃ、今日の昼カレーパンな」
「何?そんなんでいいのか?」
「普通のじゃなくて、限定販売のビーフカレーパンな」
「げ、あの高い方か!?」
「当然。それくらいじゃねぇと割に合わん」
「な、何個?」
「二個」
念の為に指二本で数を示してやれば
友人は暫く難しい顔で色々と悩んでいた様だったがすぐに
「……お前、小鴨ちゃんにあげる気だろ」
「あいつ、勾配のカレーパン、好きだからな」
頼むな、と有無を言わさず鳥谷はノートを手渡す
友人は呆れて様なえみを浮かべながら、ノートを写し始めた
さて、今日の夕飯は何にしようか
昼食を食べる前から、夕食を思案
そうこうしているうちに抗議が始まり
襲い来る眠気に何とか耐えながらソレをこなし午前授業の終了
昼休みになり、鳥谷は約束通りに友人からおごってもらったカレーパンを手に屋上へ
どうせ今日もここに居るのだろうとお言ってみれば案の条
その隅に小鴨の後ろ姿を見つける
「……お前って、本当に隅っこ好きな」
声を掛けてやれば振り返ってくる小鴨
鳥谷の姿を見、表情を綻ばせた
その笑みにつられ鳥谷も口元へと笑みを浮かべてやり
友人から報酬にと戴いたカレーパンを手渡してやる
「……カレーパン」
受け取った小鴨は更に嬉しそうな顔
鳥谷が肩を揺らしながら隣へと腰を降ろし食べ始めると小鴨も食べ始めた
カレーパンにパクつく姿はまるで小動物
小さく食べ進めていくその様を鳥谷はつい眺め見る
「……鳥谷君?」
どうかしたのかと首を傾げてくる小鴨
鳥谷は何でもないを返すとカレーパンを食べ始めた
その途中、今度は小鴨が鳥谷の横顔を眺め始める
「何?」
余りにまじまじと見られるものだからつい問えば
小鴨がゆるり手を伸ばし
鳥谷の口元へと指先を触れさせた
「……カレー、付いてました」
指先でカレーを拭ってやり、ソレを無意識なのか舐めとる小鴨
何気なく鳥谷がソレを指摘してやれば
「――!?」
自分のした事に照れ、顔も赤くうつむいてしまった
「ご、ごめんなさい!」
余程恥ずかしかったのか
涙すら目尻に浮かべ泣きそうな顔で謝ってくる
ソコまで謝られてしまえば、まるで自分が悪い事をして居る様だと
鳥谷は溜息を吐いてしまいながら
「別に謝んなくていいから。それよりカレーパン、上手かった?」
問うてやれば小鴨は俯いたまま頷いて
それならば良かった、と鳥谷は最後のカレーパンを一口
腹も程よく満たされてしまえば、次は睡眠欲
程よい眠気に鳥谷は横になるとそのまま眼を閉じた
「と、鳥谷君。こんな所で寝たら風邪ひきます」
「平気だろ。そんな寒くないし」
「で、でも……」
確かに、それほど寒い訳ではなかった
だが風邪をひかないと決まった訳ではない
ソレを心配してくる小鴨
そんな顔を向けられてしまえばどうにも寝にくい
そんな顔をしなくとも大丈夫なのにと
鳥谷が肩を揺らしながら起き上れば
同時に小鴨がくしゃみするそれが聞こえてきた
「中、入るか」
このままここに居ては自分よりも小鴨」の方が風邪をひいてしまいそうだと
鳥谷は小鴨を連れ立ってその場を後に
「そういや、今日夕飯どうする?」
「?」
「おれ、七限目の授業取ってるから、帰り少し遅くなるけど」
一緒に食べるか、と続けてやれば
小鴨は考える素振りすら見せず、直ぐに頷いて返す
「ごはんは、一緒が良いです」
だから待っている、と小鴨
鳥谷は僅かに肩を揺らすと小鴨の頭に手を置いた

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