《MUMEI》 「何?」 尚もアイスカフェラテに舌鼓をうつ。 「お子さん達、MHO(ミリオンヘイムオンライン)に捕らわれているんですよね。」 迷いのない口調だった。 だが、細心の注意を払って発した言葉だ、というのは明確だった。 「捕らわれているんじゃない。自ら志願しているのだから、語弊があるでしょ。」 この私に気を配るとは、この男はどうもそこら辺に甘さと若さが滲み出ている。 「先輩はそれを信じてるんですか!」 「信じてないわよ。現在で一番有力な情報に則っているだけ。だからこうやって足を運ぶんじゃない。この一年、成長が見られないわよ。湊川。」 いつもの様に、手厳しく。 全く、こちらの気も知らないでこんな話を持ち出して。 まぁ、時間が有る時に話しただけいいか。 「先輩は辛くないんですか?死ぬかもしれないんですよ!」 ピキッと来るものがあったので言おうとしたが、湊川の攻撃は思ったよりも長く、入る隙が見当たらない程だった。 「俺が対応した人達はみんな悲しんでました。助けてとか、泣いたりとか。でも先輩そういうのないから。」 「馬鹿じゃないの。」 真顔で、今度は目を合わせながらそう言うと、湊川は一瞬私の顔に見入り、焦って視線を前へ戻した。 「怖いし泣きたいわよ。でも、私は記者で、その情報によると、子供は自ら危険なゲームに参加している。なら、泣けないわよ。」 そう言うと、湊川は五秒程無言になった後「はぁ。」とだけ呟く様に答えた。 変な質問をしてきたのは湊川なのに、何と言う反応だ。 本当に想像を越える表情だ。 勿論、悪い意味だ。 前へ |次へ |
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