《MUMEI》
突然。
刹那。
それは突然すぎた。
目が潰れる光源が照らされた。
ワゴン車だった。
なんのブレーキ音がない。
明らかにオレ達を狙っていた。
警戒していなければ、かなり危なかった。
「う、おお!!」
狙いはオレ達と言ったが、直撃コースにいたのは、美鶴の方だった。
咄嗟にオレは美鶴を突き飛ばし、衝突寸前に体と車体の間に竹刀を挟んだ。
だが、当然焼け石に水。
ボギリ、と嫌な音がした。
衝突した衝撃でオレは5メートルは飛んだ。
当たり前だ。ノーブレーキで突っ込まれたんだからな。
まるで蹴飛ばされたボールのようにバウンドしながら道端に転がり、横たわる。
「きょ、響……くん?」
虚ろな意識の中、なんとか美鶴を確認した。
どうやら無事なようで、安心した……。
車からは二人の男が出てきた。
「だ、誰!?」
怯えた美鶴の声がした。
くそ……くそ……!
体が……動かない……!
「やめて!響くん!!」
美鶴の声が遠くなっていく。
立てよ。
立ち上がれよ。
「美つ……!」
なんで動けねえんだよ……!
オレの2年間はなんだったんだ!!
あの時のようなことを繰り返したくなくて、強くなるためにがむしゃらになった。
その力を今発揮できなくちゃ、何の意味がねえんだよ!
立てよーーーー!!!!



気がついた時には、男の一人の顔面をぶん殴っていた。
「ぐあっ」
男は鼻を抑えながら悶絶する。
いい気味だと素直に思う。だが、今の血だらけのオレよりはマシだろう。
「……来いよ、てめえら」
左腕はもう使い物にならない。
さっきの嫌な音はオレの左腕が折れた音だな、多分。
今にも折れそうな竹刀を片手で握る。
「てめえらクズ野郎なんかオレ一人で充分なんだよっ!!」

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