《MUMEI》
悲劇の始まり。
「響介ーーー!!」
響介の母親から電話で知らせを聞き、僕は急いで病院に向かった。
「カオルン……」
集中治療室の前には、美鶴が座っていた。
「一体何があったんだ!?」
美鶴から全てを聞いた。
響介はワゴン車から美鶴を庇い、轢かれた。
ワゴン車から出てきた二人の男は美鶴を拐おうとした。
それを響介は阻止した。
だが、その代償は大きかった。
新斗から聞いた。
左半身の損傷が激しすぎて、もしかしたら二度と竹刀を握れないかもしれない。
自由に歩くことすらも難しいかもしれない。
「ウソ……でしょ……?」
まさかあの響介が……?
強かった……明るかった……響介が……?

【許さない……!!】

「許さねえぇぇぇええええええ!!!」
『俺』は叫び、走りだした。
「待て神名!」
新斗に呼び止められたが、『俺』にはもう聞こえない。
病院を出たら、雨が降っていた。
躓いて、倒れた。
「うああああああああああああああ」
涙が溢れだした。
何もできなかった。
何も……できなかった……。

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