《MUMEI》 出会い新井真也17歳。趣味は屋上での読書。特技はない。好きな食べ物はないが、嫌いなものは卵全般。友達はいない。物心ついた時から友達と呼べる存在がいた記憶はない。保育園から始まり、小中高と独りで集団生活を送ってきた。寂しさは少しあった。休日や登下校、昼休みに長期間の休みの時は特に。だけど、友達を作るにはあまりにもリスクは高い。相手の気分や性格、趣味に会話などで気を使わなければならないし、ケンカしたときや同じ人を好きになったときは面倒くさい。それに比べ、孤独というのは響きは悪いけど自由が効く、好みが分かれがちな映画を観る、外食をする、勉強をする等、気を使うことなく時間を無駄なく過ごせる。 そういう考えを持っているからか、春休みを終え、最後の一年の始まりに浮き足立つ人達の気持ちが分からない。どこに耳を傾けても、クラス替え、恋人作り、春休みになにしたか等、くだらない会話ばかり。ま、確かにこの一年は重要視はすべきではある。進路を決めることは人生の中でも一番大きな分岐点であり、それを考える時間はとても貴重だ。 それをイベントととしてみる姿は、愚かだ。言っとくけど、僕は嫌われてはいないし、いじめにあったことはない。居ても居なくてもいい空気のような存在だ。つまり、僕の意見は嫉妬から来るのではなく、冷静な考えを持っているということだ。 さて、僕はどこのクラスになるか?…出来れば日が当たる教室がいいが………A組か、ま、薄暗そうなC組よりはましか。 教室だけを気にするのは、おそらく僕だけだろう。だいたいの生徒は誰と一緒か。恋人、友達、嫌いな奴等。特に外見が良い生徒は人気者だ。一緒のクラスになるというだけで、男女どちらにせよ気分的には良い。 ホームルームまでちょうど5分前か。僕は5分前行動ということばが好きだ。ゆとりが持てる。待ち合わせ、授業、交通機関、試験などには便利だ。ホームルームもそうだ。机に座り、教科書や筆箱をだし、トイレに行く。教室に戻る頃には、担任が入っていて、椅子に座って数十秒で始まる。実に実用的で素晴らしい。 問題はここからだ、始業式。これほど無駄なことはない。新人教師の発表やクラブのPRは許せるが、校長の話しは聞く価値はない。決まった台詞を壊れたブリキ人形のように繰り返す。芸のひとつもない。本当にイラつく。 長い呪縛から解放されたあとは、ロングホームルームだ。今後のことを担任が話す……ん!。 「今日から君たちと一緒に過ごす転校生を紹介する」転校生か、珍しい。こういう時、必ず教室が騒がしくなる。女子か男子か。笑える話し、どちらにせよ外見が良い前提だということだ。あらゆる可能性を考えようともしない。女子か、男子が騒がしくなる気持ちが分かったのは初めてかもしれない。外見が良い。トップアイドルにも劣らない。が、僕には関係ないことだ。外見ほど信用出来ないものはない。外見が優れれば優れるほど、内面が隠れ、ある程度のことは許される。はっきりいうが、外見が良く、内面も良い奴は高確率で居ない。例え居たとしても、それは宗教にはまった人だ。話しが反れたな。七海みづきと名前までアイドルだな。趣味は映画鑑賞、ベタだな。だいたいに限って、人気作品を見てるだけでそう言う奴は多いが、それは趣味には入らない。 「聞きたいことはあるか?」担任が作る質問コーナーも、校長トーク同様に無駄だ。理由は、終わったあとに聞けばいい話しだから。 「彼氏はいますか?」 バカな男子が考えそうな質問だな。いてもいなくても隠すのが定石。当然答えは、「いません」となる。だが、この答えは芸能人専用の言い訳だ。いないとなれば、男が群がり質問攻めに遭い、下手すれば告白の連鎖が広がる。そうなれば純粋な男友達は出来にくくなり、ちょっとしたことで男性不信にも………いや、これは考え過ぎだな。 次へ |
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