《MUMEI》 寝ぼけた頭で、ああ、そうか。きょうは月に一度の「ニクの日」だったかと納得する。で、今夜の夕食は焼肉ではなく鍋なんだな。しゃぶしゃぶか?すき焼きか? 我が家の「ニクの日」は、基本的に毎月29日なのだが、4月29日はゴールデンウィーク中とあって別の予定と重なってしまい、きょうまで延期になっていたのだ。 いや、しかしだ。それにしたって、いまはまだ朝の7時すぎだ。鍋の前に学校だろ。どんだけ気が早いんだよ。十何時間も前から、何の下ごしらえをするつもりだ。何なら朝メシ食ってくか? つーか、先月おれから強奪していった『ダンジョントラベラーズ2 王立図書館とマモノの封印』早く返せよな。おまえが強引に置いていった『うたの☆プリンスさまっ♪All Star』なら耳を揃えて返すし。 あと、我が家の鍋に闇属性はない。むしろ光の勢力だからな。 おれは二度寝の体勢に入りつつ、ベッドの脇で戦闘力ゼロ万のファイティングポーズをとるセーラー服少女に、心の中でツッコミを入れまくった。 少女の名前は福来フユカ(ふくらいふゆか)、15歳。おれと同学年で、この春からは同じ高校に通っている腐れ縁。いわゆる幼馴染みってやつだ。 フユカとは家が隣同士なこともあって、「ニクの日」のみならず、子どもの頃から家族ぐるみの付き合いをしている。 とはいえ、幼馴染みモノのエロゲーでもあるまいし、今日みたいに押しかけ女房よろしく朝から甲斐甲斐しく起こしに来るなんてことはめったにない。 おれが驚愕するのは無理のないことなのだ。 フユカは、強いて言えば、まあ兄妹みたいなもんかな。むこうは姉弟だと勘違いしている節があるが、いまそこを掘り下げるのはやめておこう。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |