《MUMEI》

ベッドから起き上がり、両腕を広げてぐぐーっと伸びをする。生あくびが止まらない。うーむ、すこぶる快調に眠いな。学校に行きたくないでござる……。

謎の戦闘員モードから素に戻ったフユカはと言えば、おれの本棚のゲームや漫画を勝手に物色している。

フユカが背伸びをして、本棚の上の段に手を伸ばすたび、セーラー服の腰まわりから透き通るような肌がのぞく。

クリクリとよく動く、好奇心いっぱいのぱっちりとした丸い瞳。白くてきれいな肌に、くせっ毛がちな栗色のボブカットがよく映える。

体型は痩せぎすだが出るところは出ているし、最近じゃずいぶん女っぽくなったなと思う。

客観的にみて、フユカが美少女の範疇に入るのは間違いないだろう。

それにこいつは、少なくとも表面上は快活で明るく、人なつっこい。誰に対しても分け隔てなく笑顔で接することができる。

おれには到底マネのできない、優れた対人コミュニケーション能力を兼ね備えていると言える。だが――

お目当てのブツを発見したと思しきフユカは、ほくほくした表情でベッドの脇にぺたんと座り込むと、『進撃の巨人』最新刊をむさぼるように読み始めた。

――そう、フユカはこういう娘なのである。色気より食い気、少女漫画より少年漫画。フユカを紹介してくれとうるさいクラスの男子連中は、そこのあたりを分かっていない。

最近のお気に入りはリヴァイ兵長で、なぜかエレンとリヴァイが素っ裸で抱き合ってる同人誌をおれに無理矢理貸してくれたこともあるのだ。

おれも『進撃の巨人』は好きだけどな。同人誌を途中まで読んで「え?なんでそーなるの!?」ってマジびびって、そっ閉じ余裕でした。

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