《MUMEI》
昨日の奴A
   〜歩視点〜


「ねぇ麗羅ちゃん!俺の名前は覚えてくれた?」


呼び方について話をしている3人の中に割って入り、麗羅ちゃんに期待の眼差しを向ける。


「名前……?っというかあだ名で呼んでいる」


俺は、更にキラッキラに輝く目で麗羅ちゃんを見つめる。


あだ名って……"歩っち"!?


麗羅ちゃんに"歩っち"って呼ばれると照れちゃうなっなどと、妄想しながら笑顔で麗羅ちゃんに尋ねる。


「えっあだ名って??」

「昨日の奴A」


返ってきたのは予想も想像もしていなかった言葉で、俺の期待は粉々になり春の風に乗って遠くまで飛んでいった。


期待してた分、切ない。


そんな可哀想な俺の隣で蝶野と海は大爆笑。


麗羅ちゃんは、笑う2人を見てキョトンとしている。


その顔が何だかいつもより、幼く見えて愛しさが募っていく。


海が笑いを堪えながら麗羅ちゃんに質問を投げかける。


「な、何で昨日の奴Aなの?」


蝶野も隣で涙目になりながら頷いている。


すると麗羅ちゃんは、大したことでもないようにあっけらかんと答える。


「昨日告白してきた奴の1番手だったからA」


麗羅ちゃん……


他の人にも告白されたんだ。


でも俺が1番だもん!


麗羅ちゃんを1番好きなのも俺だもん!




……告白をされて麗羅ちゃんが何て答えたかは、分かりきっていたから誰も尋ねなかった。


その日1日俺らは屋上で過ごした。


授業が全て終わった頃、海が「じゃあ今日は帰りますか!」と言って屋上の扉を開き出て行くと、蝶野もそれに続く。


麗羅ちゃんも立ち上がり出ようとした時、俺は麗羅ちゃんの腕を掴んだ。

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