《MUMEI》

田村はフユカのことを、1年の美少女ベストナインだかイレブンだかのひとり、くらいに認識しているらしい。

いつも、付き合ってへんなら紹介してーや、おれとおまえの仲やんけ、と小うるさい。

が、幼馴染みとして、ニワカファンにフユカを紹介するのは気が乗らない。

田村の場合、かわいくておっぱいの大きい女子なら誰でもオーケーっぽいので、それならばと、適宜、他の女の子をオススメして話をはぐらかすことにしている。

「フユカなんかよりも……たとえばほら、そこの、長尾さんはどうだ?」

おれは、教卓でホームルームの準備にいそしむ我がクラスのメガネっ子委員長をレコメンドしてみた。

委員長の長尾さんは、このあと配布するであろうプリント類を几帳面に整理している。

第一印象は地味だが、いわゆる隠れ美人。女子一軍グループと違って、落ち着きを感じさせるタイプだ。アリだろう。

田村みたいな売れない漫才師には、こういう生真面目な女子のほうが、案外釣り合いがとれていいかもしれん。わりとマジでそう思う。

田村は「かーっ!あの長尾ナツホに目をつけるとは、アラタはほんまマニアックやなー!」と言いながら、まんざらでもない様子で、彼女の全身を舐めるように吟味している。

おい、目つきがエロいぞ、おっぱい星人。

ま、なんせ、田村がネタに食いついてくれてありがたかった。

いまフユカの話題をふられても、いつもみたいにスルーできる自信ないしな。

そうこうするうちに担任がやってきて、朝のホームルームが始まった。

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