《MUMEI》 7)「おれの嫁」とはいったい何か =明晰夢。おれがおれの脳内に生み出した、おれの脳内限定の存在 難問の項番7を埋めてほっと一息。授業はすでに3限目の数学Iに突入している。 そう、ここからはごく簡単な証明問題だ。 「おれの嫁」は、現代のテクノロジーでは再現できない。それはあまりに無理がありすぎる。 それよりも「おれの嫁」を明晰夢であると考えたほうが、これまでのいろんな現象と辻褄が合う。少なくとも「おれの嫁」=明晰夢説を積極的に否定する材料は皆無だ。 そして、明晰夢である以上、「おれの嫁」が存在できるのは、おれの脳内だけ。 おれ以外のどんな人間も、おれの脳内を覗き見ることはできない。 フユカもまた、おれ以外の他者であり、神ならぬ人間である。 ゆえに、フユカがおれと「おれの嫁」の関係を知ることは絶対に不可能である。 今朝のフユカは「変猫の筒隠月子」を鮮やかに的中させた。その予想ロジックは依然としてブラックボックスではある。 けど、冷静に考え直せば、今期アニメのうち、おれが気に入りそうな作品の数なんてたかが知れている。 あらためてリストアップして気づいたが、ラノベ原作が多い。 おれの、これまでのキャラ萌えの傾向も踏まえれば、競馬の日本ダービーで1着馬を予想する程度の現実的確率には収束するだろう。 いわば、フユカは1番人気ガチガチの鉄板レースで、順当な予想を的中させたにすぎない。狼狽する必要も、逃げ出す必要もなかったのだ。 「部屋に女子を入れたよね?」云々も、しょせんは言葉のアヤ、フユカ独特のセンスによる比喩だ。そうとしか考えられない。 ならば問い詰められても、カマをかけられても、知らぬ存ぜぬを押し通せば、証拠なんて出てくるわけもない。タイミングよく『進撃の巨人』ネタでもふってやれば、フユカもじきに飽きるだろう。 だいたい、おれが女子を部屋に連れ込んだところで、幼馴染みへの説明責任なんてないんだしな。どや。 おれは自分の導き出したエレガントな結論に満足すると、未解決問題を片付けたばかりの天才数学者のごとく机に突っ伏し、しばし眠りに落ちた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |