《MUMEI》
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「えっと、大丈夫…じゃないですね、…何か力になれないでしょうか?じゃあ何ができるんだって言われたら終わりですが、話だけは聞けると思います。はい、多分…なんで、もう泣かんといてください。」
いったい何を言ってるんだろうぼくは、いや確かに、泣いてる女の子?(だよなまだ会ったことないけど)がいたら声をかけるのが普通でないか?という人がのではないか?はたまた、よしここでイメージをアップさせておけばゲフフ。というやつもいるとおもう、今の僕なら、そう思うだろうし、ああ、もちろんさっきのどちらかでいえば後者だ。……だがしかし、この時の僕は、ものすごく暗く、人と何かをするなんて全くできない奴だった。とっさに声をかけてしまったことに自分でも驚いているぐらい。
電話の向こうはいたって静かだ。嫌われたかもしれない、その沈黙に耐えられなくなった僕は、黙って電話を切ろうとした。だが、
「ほんとうにきいてくれるんですか?」
電話の向こうから、聞こえてきた声は、何かにすがっているような声だった。もちろん「さっきのはすいませんノリで言ってしまいました」なんて言えるわけがない。
「もちろんです、こんな僕でいいのなら」
自分でも大きな一歩だった。今まで他人と接したことがほとんどない僕が、人の悩みなんて聞けるんだろうか。
さらに彼女は、ハードルを上げてきた。
「あの、電話ではなんなんで、会って話しませんか?」
無理無理無理!電話でもドキドキしてるのに、直接会うなんて!しかも美少女(声だけ聴くとかなり美少女)となんて!…だが僕の口は、
「わかりました。失礼ですがどこに住んでます?」
馬鹿馬鹿馬鹿!何を言ってるんだ僕の口は!………だって、嫌ですなんて言えるわけないじゃん。泣いてんだもん。
「えっと、滋賀です」
遠いなおい。
「わっかりました。どこまで行けば?」
「ああ、ああ、ちょ、ちょっと待ってください!」
「?」
「ナツさんのおうちの場所聞いてません」
「えっと近いんで別にいいんですが、名古屋です。はい。」
「遠いじゃないですか!」
「大丈夫ですよww」
「大丈夫じゃないですよ!」
「大丈夫ですよ、近くに用事があるので」
ホントはないけど…まあいいだろう。
「本当ですか…でも。じゃあ、その用事のある場所の近くを教えてください、そこまで行きます。」
……ソレハドコデスカ?

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