《MUMEI》

 「おっ早う!小鴨ちゃん、ソレと鳥谷」
翌日は、小鴨の願いが通じたのかよく晴れていた
小鴨特製の弁当を抱え集合場所へと出向いてみれば
鳥谷の友人に加え、小鴨の友人もそこに居た
知った顔が居る事に小鴨も安堵した様で
随分と手廻しがいいものだと鳥谷は友人の方を見やる
「と、トリ。何か、顔怖いぞ」
「別に」
「な、何か怒ってんのか?俺、なんかした?」
「別に。唯、随分と手廻しが良いとは思ってるけど」
「それは、ほら!女子一人じゃ小鴨ちゃんが緊張するだろうと思ってだな……」
つまりは小鴨を想っての事だと主張する友人
それが本心であるのかは定かではないが
小鴨も変に身構える事をしなくてよさそうなので良しとする事に
「で?こっからどうすんだよ?」
大所帯になってしまったこの状態で皆で動くのかを問うてやれば
友人は突然に肩で笑い出し
「これでペアを決めたいと思う!」
意気込んで出して来たのはくじ引き
態々作って来たのだろうソレに
随分と用意が良いと、鳥谷は溜息を吐いた
「さぁ皆!一斉に引け!!」
せーのの掛け声で皆がソレを引く
どうやら同じ番号同士がペアになるらしく
鳥谷は自分が何番なのかを、別段興味もないのだが一応は確認する
四番
相手は一体誰になるやら、と溜息を吐いたその鳥谷の傍ら
「……四番です」
小鴨の声が聞こえてきた
鳥谷が南蛮になったのかが気に掛った様で
爪先立ち、何番になったのかを問うてくる
鳥谷は僅かに肩を揺らすと、自身が引き当てたソレを見せてやった
「一緒、ですね。良かったです」
嬉しさについ声が大きくなりかける小鴨へ
唇に指を当てて見せ、それ制す
周りばれてしまえば喧しくなるだろうからと
鳥谷は小鴨の手を取ると、ばれない様こっそりとその場から歩き出していた
「鳥谷君……」
「良かったな。相手がお互いで」
安堵の表情を無意識に浮かべていたらしい小鴨
鳥谷にそ顔を覗き込まれ、漸くその事に気付く
「……やっぱり、鳥谷君と一緒が良かったから」
鳥谷はどうだったのか
気になったらしい小鴨が顔を伏せてしまいながらソレを問うてきた
鳥谷はあえてソレに応えて返す事はせず
小鴨の手を握り返すとまた歩き出していた
答えが返って来ない事に小鴨は僅かに寂しげな顔をして見せたが
ふと見てみた鳥谷の耳が僅かに赤くなっている事に気付く
そうだ。この人は、言葉よりも態度で示す人だった
手を握ってくれている鳥谷のソレの温もりが心地よく、小鴨は肩を揺らした
「どうかしたか?」
その声が聞こえたのか、首だけを振り向かせてく鳥谷へ
小鴨は緩々と首を振って見せると、何でもないを返す
それから暫歩き、とあるモノの前で小鴨の脚止まった
それは、メリーゴーラウンド
ソコばかりを見る小鴨の手を引くと、鳥谷はソレに乗る事に
「馬がいいか?それとも、馬車?」
よもや鳥谷が一緒に乗ってくれるとは思って居なかったのか
驚いたような表情
暫く考え、小鴨はおずおずと馬の方を指差した
鳥谷が小鴨を軽々と抱き上げ、その馬へと乗せてやれば
小鴨はまじまじと鳥谷を眺め見る
どうしたのかを問うてやれば
「……一緒に、乗ってほしいです」
照れてしまっているのか、顔を伏せてしまった
こうやって、我儘を言ってくれても全然構わないのに
「……分かった」
どこまでも控えめな小鴨に、鳥谷は苦笑を浮かべるとその馬へと乗った
唯、回るばかりのソレ
だが楽しそうな小鴨の様に、こういうのもたまには悪くないと
鳥谷は肩を揺らしていた
「さて、次はどれに乗る?」
メリーゴーラウンドから降り、次のアトラクションへ
どれにしようかと探している内に、時刻は丁度昼
小鴨手製の弁当を広げ、さっさと昼食に入る
「こんなにも、大変だったろ」
いただきます、と両の手を合わせながら
鳥谷はその様々並ぶおかずたちにそんな感想を一言
小鴨は首を小刻みに振って見せ、そんなことないを返す
そして用意してきたらしい紙皿へとおかずを淹れてやりソレを鳥谷へ
どうぞと勧められ、鳥谷はいただきますと食べ始めた
「美味い。よく出来てる」

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