《MUMEI》
出て来ないリミッター。
この一週間、僕はどうやって一日を過ごしていたか、覚えていない。
今通学中だが、ちゃんとした足取りなのかどうかも怪しい。
ズボンの右ポケットが震え出す。


『カオルン、今日の放課後、文化室に来て』


美鶴からのメール。
内容が頭に入らない。
なにも考えずに携帯をズボンの右ポケットに仕舞った。
響介が入院してから、リミッターは一度も発動していない。
いつもなら僕がこんなになっていたら、《俺人格》は出てきていたのに、今回は出てこない。
もしかしたら、見限られたのだろうか。
まだ危機はある。
響介を痛め付けた男達、品川や目黒はまだ僕達を狙っているはずだ。
どうしたらいいか、わからない。
どうすればいいか、わからない。
そんなとき、通行人と右肩をぶつける。
軽くよろめき、振り向くと、通行人の男は走っていってしまった。
謝る余裕すらなかった。
これからは前の通行人に注意して登校した。

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