《MUMEI》
手作りの御守り。
放課後、美鶴のメールの言う通りに文化室に行った。
中には美鶴と新斗がいた。
「……どうしたの、一体」
「どうしたのじゃないだろう。神名、この一週間、何も起こらなかったか?」
僕は軽く頷く。
「ボク達も何もなかった。……逆間は?」
「ミクちゃんにも何もなかったみたいだよ。今日は迎えの車で帰ったから、無事に帰れると思うよ」
「うん、ここから見てたから」
チラッと美鶴は窓の外を見た。
新斗がため息を吐き、メガネをくいっと直す。
「腑抜けたな、神名」
「…………」
何も答えられなかった。
実際僕は何もできない。
他力本願ーーー。
新斗に言われたことがまだ心に刺さっている。
「そう言えば……響介は?」
美鶴が首を振る。
「……面会謝絶。あれからまだ一度も会えてないんだ……」
「そ……っか」
美鶴の目は赤く充血していた。
また……泣いていたのかもしれない。
ダメだ……。自分のことで精一杯で、慰めの言葉すら出てこない。
「カオルンにもこれ、渡しておくね」
そう言って取り出したのは、御守りだった。
「神様頼みかよ、て思うかもしれないけど、あたしにはこれしかできないから……」
その御守りは、どうやら手作りのようだった。
「……下手だね」
「昔から思ってたけど、カオルンは正直にものを言い過ぎだよね!?」
「痛い痛い痛い痛い痛い!!」
美鶴は僕の爪先を踵で踏み潰す!超痛い!
「せっかく休日全部使って作ったのに!」
「ははは、ありがとう」
久しぶりに、笑うことができた。
これも美鶴の手作り御守りのおかげ、かな?

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