《MUMEI》

当然として巨大な羊が姿を現した
「壊せ。この悪夢たちが意思を持つ前に全て」
ロンの声に応じる様にその羊が動き始めれば
その景色の至る処がまるでガラスの様に砕け始める
何が起こっているのか
辺りを見回す斎藤の視界が追う度に全てが白に染まっていく
そして最後の一欠片になったソレを食べ終えるとその羊は己が身を小さく変え
ロンの手の平へ
「満足したか?良かったな」
すっかり腹を膨らませ寝に入っている羊にロンは肩を揺らし
その羊を懐に入れ、斎藤へと向いて直ると
ロンは徐に斎藤へと手を伸ばし、頭に手を置いてきた
「余り、悪夢には深入りするなよ」
それだけを言って残すとロンはその場を後に
フッと消えていくその姿に
斎藤は自分が今、現実離れしている現状に置かれているのだという事を実感させられる
「……私、どうなっちゃうんだろ」
一人きりになった室内
その恐怖に耐えるかの様に膝を抱え蹲る斎藤
小刻みに身体を震わせているといつの間にか
小さなあの羊が膝の上に乗ってくる
ふわふわモコモコした人形のようなソレに、つい身体を撫で始める斎藤
暫くそうしている内に、ゆっくりとした眠気に襲われる
「……寝ちゃおうかな」
欠伸が口をついて出始め、斎藤はベッドへと入っていった
その後に羊続き
一人と一匹はそのままゆるり寝に入っていったのだった……

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