《MUMEI》 見覚えのある場所外はまだ薄暗く、当然のことながら人の気配はない。 ユキナはしきりに辺りを警戒しながら歩いている。 ユウゴも同じように警備隊の姿を捜すが、今のところ気配は感じられない。 別の地域を探しているのだろうか。 「ねえ、どこ行くの?」 「さあな。……とりあえず、ここから離れるぞ」 そう。 動けないサトシからできるだけ離れなければならない。 ちょうど二人が住宅街を抜ける頃、奴らは現れた。 「いきなり来やがった!」 何の前触れもなく始まった銃撃に、ユウゴとユキナは慌てて走り始める。 後ろには、二人を狙う警備隊たち。 さらに奴らはユウゴたちの行く手からも現れた。 「くそ!塞がれたか」 「ユウゴ!こっち」 ユキナは叫びながら右へ抜ける道へ入った。 そこは歩行者専用らしく、ひどく幅が狭い道だった。 ユウゴはユキナを追うようにその道へ走った。 後ろからは数人が一列に並んで走ってくるが、発砲してくる気配はない。 この道で撃てば同士討ちになると思ったのだろう。 しかし、追ってくる人数がやけに少ない気がする。 まさか、先回りしているのでは。 そんなユウゴの嫌な予感は的中した。 その道の出口に人影が揺れているのが見えたのだ。 ユウゴは瞬時にユキナの背中を突き飛ばすように押し、自分も姿勢を低くして、最初の攻撃を上手く避けた。 そして、そのまま転倒しかけたユキナを引きずり起こしながら走る。 「できるだけ角を曲がりながら逃げるぞ」 「う、うん」 ユウゴの言葉通り、右へ左へと相手を撹乱するように、道を曲がりながら逃げ続けていると、やがて二人は見覚えのある場所へ出た。 前へ |次へ |
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