《MUMEI》
同胞と異種と!
暫く歩くと奥の方から光が見えてきた。出口を
出るとそこは砂漠だった。


ロ「なっ……砂漠!?クロード……!」
ク「何ですか……これ……?…村は…?私達の
集落は……?」
ゼ「おいっ向こうの山は氷山になってるぜ!?
何が起こってるんだ……シド様、これは一体…
…シド様?」
『…、……っ…』
ロ「シド様!?どうしましたフラフラと……、
まさか熱中しょぶっ!?」
『ちょっと静かにしててくれないか?』
ロ「…は…はぃ……」
『クロード……この辺りは精霊や妖精は多かっ
たのか?』
ク「ええ、ランドルシア王国には精霊、妖精も
守護契約をしてますから……まさか!」
『ああ、そのまさかだろう』
ロ「どういうことです?」
『……洞窟を出てから頭に何か響いている感じ
がしてな……だが言葉が聞き取れない。聞いた
ことのない言葉だった。そしてこの異常現象…
…恐らく精霊が原因だろう』
ロ「ではここが砂漠になったのもあちらの山が
氷山になったのも……精霊が」
ク「王国の復活によって、それぞれの力がよみ
がえったが、急に増えた力を制御出来ず……こ
のようになったということですか」
『これは後継者が力を制御出来ていないせいだ
ろう……まずはセア・リアの者達を探そう。ま
だ近くにいるかもしれん』
ゼ「探すにしても砂漠ですよ!?野垂れ死にま
すよ!?」
『だったら……』


パチンと指を鳴らせば全体にドーム状の膜が張
られた。


ゼ「暑くない……」
『セア・リアの者もゼスが言うように野垂れ死
ぬのを防ぐため水を探したはずだ。オアシス…
…もしくは海岸沿いのどこかだろう』


その後、暫く砂漠の中を歩き続けたが一向にオ
アシスどころか海岸すら辿り着かず、方向感覚
が無くなっていた。


ロ「はぁ、はぁ」
ゼ「大丈夫かロイド?」
ロ「っく……あれから歩いているのに何故そん
なに平気なんですか……」
ゼ「鍛え方が違うからな……っておい!?」
ロ「……っ」
ク「……暫く休憩をとった方がいいですね」
『そうだな。今、場所を作る』


指を鳴らし、テントを出して倒れたロイドを寝
かせた。体力のあるゼスには引き続き捜索させ、
俺はずっと感じていた違和感がなんなのか考え
ていた。


『……』
ク「コーヒーを淹れましょうか?」
『ああ、頼む』
ク「……何か分かりましたか?」
『……どうにも不可解で、ハッキリとは言えな
いが……ここは何かが違う気がするんだ』
ク「違う?……まさか大陸を間違えたとか?」
『いや、大陸は合っているだろう』
ク「あなた様でも分からないとは……そうだ、
魔法で道を調べるか場所を知ることは出来ないのですか」
『やろうとしたが出来なかった。魔法が発動し
ない』
ク「え?ですが、膜やテントも出せたんですよ
?」
『ああ……』
ク「何故でしょうか?発動しないなんて……制
限でもあったのでしょうか」
『…制…限……!まさか…』
ク「陛下?」
ゼ「シド様、今戻ったぜ」
『ゼスか、丁度良かった……で、どうだった?』
ゼ「このあたりを一回りしたが……特に何もな
かった……だが……」
『……だが?』
ゼ「人骨があった」
ク「っ!?」
『……なるほど』


向かいに腰を下ろしたゼスの報告に一人納得し
た顔をするとゼスとクロードは訝しむように見
つめてきた。

ゼ「?…どういう事で?」
『その前にロイドはまだダメか?』
ク「そうですね、まだ「私ならもう大丈夫です
」!?ロイドさん、起きていたんですか?」
ロ「シド様より休んではいられませんから」


そういって笑うロイドの顔は以前に比べ、良く
なっているようだった。


『一眠りしたため体がここに慣れてきたんだろ
う』
ク「慣れる?」
『……思うに、砂漠や氷山は異常現象ではない
だろう』
ロ「精霊のせいではないのですか?」
『いや、原因は精霊だが現象ではなく幻覚。俺
達は精霊の作り出したこの幻覚の世界を今、現
在本物として見せられているんだ』
全「「「!?」」」

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