《MUMEI》
非日常
殴られた…、のか?

再度、鈍い音。
今度は右頬だ。

無防備な状態で殴られ、まともな体勢も整えられていなかったので、後ろに一歩二歩とよろける。

「はは、こいつよろけてらあ!」

顔をあげるとそこには柄の悪い連中が4、5人。
俺を見て、腹を抱えて笑っている。

ヤバい。

しっかりとした体勢も整えられぬまま、今度は別のやつが近寄ってきた。

と共に奴は膝で俺の腹を蹴る。そして俺の胸ぐらを掴むと、「オラ」といって俺をギロリと睨んだ。

「金、持ってんだろ?

大人しく出せば悪いことはしないからさあ…
早く出しなよ」

それと同時に店長の言ってたことが頭をよぎる。

まさか、本当に出くわすなんて思わなかった。
浅はかだった。

だが絡まれてしまったものは仕方がない。今はこの戦局をどうやって乗りきるか。

俺は財布の入った鞄に目を向けた。

確か中身は3000円ちょっと。それからナナコやらいくつかのカード。あとは学生証くらいだ。

その後に俺はチンピラたちに目を向ける。

相変わらず目の前の男は、いやらしく笑いながら俺をギロリと睨み付けている。
他は俺と俺の胸ぐらを掴んでいる男を核に群がっていた。どれも髪の毛を派手に染めていて、髪型もそれに負けず劣らず派手だ。

だけど見たとこそこまで強くもなさそう。
よく見たらただの近所のチャラい奴レベルだ。


…これなら、行ける。


俺はすうぅと息を吸い込むと、自分の膝で奴の腹を殴る。

「くぅっ!?」

奴が変な声をあげてよろめいた。
と同時にその脇をすり抜け、横に転がっていた鞄を掬い上げる。

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