《MUMEI》

立ち止まる。

でも、物を投げつけられる気配も、さっきの奴らが近づいてくる気配もなかった。

ガタンゴトン…

それでも遠くに、電車の音は聞こえて。

…どういうことだ?

そっと、後ろを振り向く。

「……は、」

思わず、声をあげた。

奴らが倒れていた。
俺から金を巻き上げようとした、チンピラ共が。

どうやら全員気を失っているらしい。
でも奴らのどこにも、俺の殴りあと以外は傷も痣さえもなかった。

どういうことだ?
この一瞬のうちに、奴らに何があった?

ボーッと奴らを眺めながら考える。
全くもってわからない。

「おーい、」

すると。

ツンツンと肩をつつかれる感覚と共に、女の声が俺の耳に聞こえた。

ハッと俺は我に帰ると、慌ててそちらを振り返った。

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