《MUMEI》
プロローグ〜冷たい子〜
「橘、聞いてる?」
「聞いてるよ。てか、俺、そういうの興味無いし」
橘君は、不機嫌そうに答えた。
ストレートに言われるとめっちゃ傷つくんですけど・・・。
しばらく席隣だし、不安・・・。
「愛鈴!橘は誰に対してもあんな感じだから!」
「うん・・・・・・って、みんな、橘君と会ったことあった?」
「中学が一緒でね、受けた高校も一緒だったって訳」
「結構このクラス、オナ中多いんだよね」
「へぇ・・・」
何でだろう・・・?って、私も似たようなもんか。
「あれでも、めちゃモテるんだよ〜」
「あ〜分かるかも。まぁまぁカッコいいし?」
「でも、全員断られたって」
「性格からしたらそうか・・・」

キーンコーンカーンコーン・・・

チャイムが鳴り、入学式となった。
と言っても、校長先生と、生徒指導部の先生の話と、
担任発表などであっさりと終わった。
これで家に帰れると思ったら、授業がFULLにあるのだ。
だから、鞄が重たい。

*数学*

数学はあまり得意な方ではない。
だが、授業さえ聞いていれば分かる気がした。
横目で隣を見ると・・・
「え・・・」
爆睡していた。テストとかあるのに、大丈夫なのかな?
そう思っていると・・・
「アンタ、何見てんの?」
思いっ切り睨まれた。ううっ・・・怖い・・・。
「え、あ、ごめん・・・。寝てて大丈夫かな、と思って」
「大丈夫だから寝てる。じゃ」
そう言って橘君はまた寝てしまった。

結局、橘君はほとんどの授業を寝て過ごしていた。
“大丈夫だから寝てる”って・・・どんだけ自信家?
言葉も、視線も冷たい橘君。
彼には何かある気がした。

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