《MUMEI》
プロローグ〜注目〜
「ねぇ! あれ、まりんじゃない!?」
「ホントだ。やっぱ可愛いよな〜」
「学生とは思えない色気があるよね〜」
「羨ましい〜」
まりんこと、長谷川愛鈴(はせがわまりん)は、今日から高校生。
やっぱり、気付かれちゃうんだよね。もう慣れたけど。
私は、幼稚園の時からモデルとして、中学生からは、
モデル兼アイドル歌手として芸能界で活動してきた。
みんなそうやって羨ましがるけど、そんなに甘くないよ。
本当は、アイドルなんて辞めたい。そうすれば多分楽になるから。
でも、ウチの家は、家計が厳しいのだ。だから、私が頑張らなきゃいけない。

ガラッ

「・・・」
「・・・」
「あれって・・・」
「まさか、あのまりん?」
「同じ高校・・・?」
「同じクラス・・・?」
「・・・」
「マジで〜〜〜〜〜!?」
やっぱりここでもばれるんだよね。芸能界では“まりん”として
やってるし、メイクもあれほど濃くないはずけど・・・・。
「ヤバッ・・・俺、生まりん初だわ」
「普通そうだろww」
私は、正直人見知りで、握手会などを開いたことが無い。
コンサートやライブもあんまり。
「あの・・・テレビに出てるまりんですよね?」
「そうだよ。っていうか、敬語じゃ無くていいよ。同じクラスでしょ?」
精一杯の笑顔だった。冷や汗が背中を伝う。
「これから・・・よろしく」
「うん。よろしく」
あっという間に私の周りには人集りが。
でも、一人だけ席に座ったまま。私の隣の席だった。えーっと、名前は確か・・・
「おい、橘!お前、いいのか?まりんがいるのに」
「・・・」
?もしかして・・・シカトですか?

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