《MUMEI》 断絶。覚醒した。 いつかの、あのイメージの世界にいた。 ……また、ここだ。 水面に寝ている僕。 妙に居心地が良い。 僕のイメージの世界だから、当然か。 と、いうことは、あいつがいるんだろうか。 響介が襲われてから、現れないあいつ。 《俺人格》が。 起き上がる。 見回しても、いない。 ……どうしたらいいんだろう。 出ようにも出れない。 前回は無我夢中で、いつの間にか出れていた。 ここに1人じゃ、何も始まらない。 何も起こらない。 「『俺』!どこにいるの!?」 大声で呼ぶ。 声は響かない。 後ろからぽちゃん、と水を踏む音がした。 振り向くと、『俺』がいた。 「……久しぶりだな。こうして対面すんのは」 『俺』の表情は暗い。 「なんで出てこないの?」 ……『俺』は沈黙する。 「……俺は……俺を許せない」 やっぱりそうだった。 僕と同じ。自分を責めていた。 響介があんなことになってしまったのも……美鶴が泣いたことも……新斗が責任を負ってしまったことも……ミクちゃんを巻き込んでしまったのも…… 全て……僕のせいだ……。 『俺』は僕だから、気持ちは一緒だ。 そこで気づく。 『俺』の感情が流れてこない。 2年前、僕は『俺』をわかろうとしなかったから、感情は逆流して『俺』には僕の感情が筒抜けになっていた。 だが、わかり合ってからは、『俺』の感情だってわかるようになった。 おかしい。 まさか……断絶したのか? そうなってしまうと、僕と『俺』はまったく別の人格になってしまう。 わかり合うこともできない。 急に怖くなった。 もしかすると、自分が今までと違う人間になってしまうんじゃないかと。 「安心しろよ。そういうわけじゃねえから」 『俺』が言う。俺の心を読めないのは別問題と『俺』は言った。 前へ |次へ |
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