《MUMEI》
闇の見え隠れ 〜夕季〜
新しい学校にも大分慣れてきた夕季。
ただ、今日はあの日だ。お墓に行かなければ・・・。そう思った。
今日は母夕季の母が死んだ日。自殺だった。
マンションから飛び降りた。
「・・・悲しすぎる」
耐えられず、そんな言葉が夕季の口から零れた。

昼休みの屋上。
昼食を軽く済ませた夕季は、1人になれる屋上へ来ていた。
ここに1人で居るのが一番落ち着く。家に帰れば・・・辛い。
しかし、今日は思わぬ来客があったようだ。
「た、橘君・・・」
何で来るんだよ・・・落ち着けないだろ・・・。
迷惑に思った。
そう言えば、朝、男子が騒いでた。
“まりんがデビューした日だ”って。
じゃぁ、何でこんな所に? ・・・何かあるな。
でも、夕季にはそんなことどうでもよかったのだ。
というか、自分の抱えていることだけで精一杯。
人を心配する余裕なんて無かったのだ。
「アンタ、何でここに来た? みんなの所、行けば? チヤホヤして貰えるだろ?」
「・・・」
「・・・」
長い沈黙の末、啜り泣く声が聞こえてきた。
「・・・・・・イヤだよ・・・もう・・・こんなの・・・」
「・・・! な、何で泣いてんだよ・・・」
夕季は焦る。女って泣くと面倒だ。
「芸能人になったって・・・うぅっ・・・何にも良いこと・・・無い・・・うっ・・・」
まさか、夕季は思った。自分がさっき言ったことが原因か・・・と。
「さっきは・・・悪かった。」
怒鳴られるかと思ったが、向こうは笑みを浮かべている。
しかし、その顔はどこか引き攣っていた。
「・・・ううん。良いの。橘君は・・・悪く無いから・・・」
「何かあったら・・・」
「・・・?」
「何かあったら・・・言えよ」
「う・・・うん・・・///」
夕季は耳まで熱くなるのを感じた。

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