《MUMEI》 恋人ごっこの始まり2橘君の後を追って、辿り着いたのは、人気の無い体育館倉庫。 体育館倉庫には入りたくなかったのに・・・。 そう思いつつ、平静を装って、口を開く。 「で、話って何?」 「アンタ、俺の恋人のフリをしてくれ」 一瞬彼が何を言いたいのか分からなかった。恋人のフリ? 絶対に無理でしょ。私、恋は本気でするタイプなのだ。 「本気じゃ無い恋をするの?」 「そういう訳じゃ無い。最近、女子達がしつこいんだよ」 困り顔で橘君は続ける。 「見かけ上でいい。それ以上は求めない」 あぁ、大体話は読めた気がする。 「俺に恋人がいるって分かれば寄らないだろ」 「だったら、他の子に頼んでよ」 「他の女が鬱陶しいから言ってるんだ」 「あ・・・なるほど。・・・分かった」 「助かる」 やっぱり、橘君、何かある気がする・・・。 聞きたいけど、聞けない・・・何か踏み入られないように彼の心には、 崩れないバリアがあるように思えた。 「でも、この条件飲んで?」 「条件?」 「私“アンタ”って名前じゃ無いよ。」 「じゃぁ・・・愛鈴って呼ぶのか?」 「そういうこと! 私は・・・夕季・・・かな? いい?」 「分かった・・・」 こうして、私と夕季の奇妙な恋人ごっこ・・・つまりは地獄が始まった。 前へ |次へ |
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